寒くなってくると、ホットコーヒーがすぐにぬるくなってしまうのが気になります。結論から言うと、いちばん効くのは「カップを先に温めておくこと」です。冷たいカップは注いだ瞬間にコーヒーの熱を奪い、計算上は10℃以上も温度が下がることがあります。そのうえで、飲み頃は60℃前後とする研究があり、熱すぎる状態で急いで飲む必要はありません。
この記事では、ホットコーヒーがすぐ冷める理由、カップの温め方、飲み頃の温度、冷めにくいカップやマグの選び方を、自宅でコーヒーを楽しみはじめた人向けにまとめます。
ホットコーヒーがすぐ冷める3つの理由
1. 冷たいカップに熱を奪われる
いちばん大きいのがこれです。陶器やガラスのカップは熱をため込む性質があり、室温のまま注ぐと、コーヒーの熱がカップ自体を温めるのに使われます。特に厚手で重いカップほど、最初に奪われる熱が大きくなります。
2. 表面や口の広さから熱が逃げる
コーヒーの表面からは湯気(水分の蒸発)として熱が逃げていきます。口が広く浅いカップは表面積が大きいぶん冷めやすく、口がすぼまった深めのカップは冷めにくい傾向があります。
3. 量が少ない
同じカップなら、量が少ないほど早く冷めます。少なめに淹れるときは、小さめのカップに注ぐほうが温度を保ちやすくなります。
カップを温めると何℃違う?計算で比べてみる
どのくらい差が出るのか、単純な熱のやりとりで試算してみました(空気への放熱は考えない、目安の計算です)。条件は、85℃のコーヒー150mlを、重さ300gの陶器カップ(陶器の比熱は約0.85J/g・℃として計算)に注いだ場合です。
| カップの状態 | 注いだ直後の温度(計算上) | 下がった温度 |
|---|---|---|
| 室温(20℃)のまま | 約66℃ | 約19℃ |
| お湯で40℃に温めた | 約72℃ | 約13℃ |
| お湯で60℃に温めた | 約78℃ | 約7℃ |
実際には空気中にも熱が逃げるので、どの場合もこれより少し低くなります。それでも、カップを温めるだけで注いだ直後の温度に10℃以上の差が出ることが分かります。カップが軽く薄手なら差は小さく、厚手の重いマグほど予熱の効果は大きくなります。
カップの温め方:3つの方法
- お湯を注いで待つ(いちばん手軽):コーヒーを淹れる前に、ポットのお湯をカップの半分〜8分目まで注いでおき、抽出が終わったら捨てます。蒸らし〜抽出の2〜3分でカップは十分温まります。
- ドリップの湯通しのお湯を使う:ペーパーフィルターを湯通し(リンス)するときに落ちたお湯を、そのままカップに注いで予熱に使うと無駄がありません。フィルターの湯通しについてはペーパーフィルターの折り方と選び方で解説しています。
- 電気ケトルの残り湯を使う:多めに沸かしておき、コーヒー用とは別にカップ用に回します。
熱湯を注いだカップは持ち手以外が熱くなるので、やけどに気をつけてください。耐熱ではないガラスのカップに熱湯を注ぐと割れることがあるため、器の表示を確認しましょう。
ホットコーヒーの飲み頃は何℃?
「熱いほどおいしい」と思われがちですが、研究では少し低めの温度が示されています。やけどの危険と「温かさの満足感」を両立する温度を計算した米国の研究(Brown & Diller, Burns, 2008)は、好まれる飲用温度を60℃前後(約52〜68℃)とする先行研究を引用し、そのうえで最適な温度を約58℃と見積もっています。
また、世界保健機関(WHO)の専門機関である国際がん研究機関(IARC)は2016年、65℃を超える非常に熱い飲み物を飲むことを「おそらく発がん性がある(グループ2A)」に分類しました(IARCモノグラフ第116巻)。これはコーヒーそのものではなく「非常に熱い温度で飲むこと」についての評価で、主に70℃前後の熱いお茶などを日常的に飲む地域の研究にもとづいています。
つまり、淹れたての80℃以上のコーヒーを急いで飲むより、カップに注いで少しおき、60℃前後で飲むのが、安全面でも無理がありません。カップを温めておくのは「熱々で飲むため」ではなく、飲み頃の温度を長く保つためと考えるとよいでしょう。
温度で味の感じ方も変わる
一般に、熱いうちは香りが立ちやすく、温度が下がるにつれて酸味や甘みを感じやすくなるといわれます。温度による味の移り変わりを楽しむのもコーヒーの魅力のひとつです。酸味や苦味が気になるときの原因はコーヒーが酸っぱい・苦いのはなぜ?で解説しています。
冷めにくいカップ・マグの選び方
| 種類 | 保温性の目安 | 向いている飲み方 |
|---|---|---|
| 真空断熱(ステンレス二重構造)マグ | 高い。外側が熱くなりにくい | 在宅ワークなどで時間をかけて飲む |
| 厚手の陶器・磁器マグ | 予熱すれば比較的保つ | 香りも楽しみながらゆっくり飲む |
| 薄手のカップ・ガラス | 冷めやすい | 淹れてすぐ飲みきる少量の1杯 |
ほかにも、ふた付きを選ぶと表面からの放熱が減り、口がすぼまった形は香りもこもりやすくなります。真空断熱マグは保温性が高い反面、飲み頃まで下がるのに時間がかかるので、熱いまま口にしないよう注意しましょう。
淹れる段階でできる「冷めにくい」工夫
- サーバーも温めておく:2杯以上淹れるときは、サーバー(コーヒーを受ける容器)にもお湯を通しておくと、注ぐ前の温度低下を抑えられます。
- 湯温を下げすぎない:抽出のお湯は90〜96℃が目安とされます。ぬるいお湯で淹れると、味が薄くなるうえ仕上がりの温度も低くなります(コーヒーの湯温は何度がベスト?)。
- ミルクは温めてから:冷たい牛乳をそのまま入れると一気に温度が下がります。カフェオレにするなら牛乳を温めてから合わせましょう(カフェオレとカフェラテの違いと作り方)。
- 淹れすぎない:飲みきれる量だけ淹れるのが、結局いちばんおいしく飲めます。残ったコーヒーの扱いはコーヒーは作り置きできる?を参考にしてください。
もっと詳しく知りたい方へ
淹れ方の基本から応用までの全体像は、親ガイドのコーヒーの淹れ方完全ガイドにまとめています。器具選びまで踏み込みたい方は自宅コーヒー器具の選び方もどうぞ。
よくある質問
Q. ホットコーヒーの飲み頃は何度くらいですか?
A. 好まれる温度は60℃前後(おおむね52〜68℃)とする研究報告があります。淹れたては80℃以上あることが多いので、カップに注いで数分おき、口に含んで熱すぎないと感じる温度が目安です。国際がん研究機関(IARC)は65℃を超える非常に熱い飲み物を飲むことについて注意を呼びかけているため、熱すぎる状態で急いで飲まないようにしましょう。
Q. カップを温めるとどれくらい違いますか?
A. 計算上の目安ですが、室温20℃・重さ300gの陶器カップに85℃のコーヒー150mlを注ぐと、カップに熱を奪われて約66℃まで下がります。カップをお湯で60℃程度に温めておくと約78℃にとどまり、10℃以上の差が出ます。実際には空気への放熱もあるので、どちらもこれより少し低くなります。
Q. 冷めたコーヒーを電子レンジで温め直してもいいですか?
A. 温め直すことはできますが、香りは淹れたてより弱くなり、酸味や苦味が強く感じられやすくなるといわれます。温め直す場合は加熱しすぎないよう短い時間で様子を見ながら行い、沸騰させないのがコツです。最初から冷めにくい工夫(カップの予熱や保温マグ)をしておくほうが、味の変化は小さく済みます。
この記事について
運営者のTANY(タニー)は、ホームカフェ歴15年。国内外100種類以上のスペシャルティコーヒー豆と、20種類以上の抽出器具を試してきました。本記事の温度の数値は、公開されている研究・公的機関の資料と、単純な熱量計算による目安にもとづいており、特定の商品を実際に使った体感を断定するものではありません。感じ方には個人差があります。
参考資料
- IARC(国際がん研究機関)「IARC Monographs evaluate drinking coffee, maté, and very hot beverages」プレスリリース No.244(2016年)https://www.iarc.who.int/wp-content/uploads/2018/07/pr244_E.pdf
- Brown F, Diller KR. “Calculating the optimum temperature for serving hot beverages.” Burns 34(5), 2008. ScienceDirect
- Abraham J, Diller KR. “A Review of Hot Beverage Temperatures—Satisfying Consumer Preference and Safety.” Journal of Food Science, 2019. Wiley Online Library
※本記事はアフィリエイト広告(PR)を含みます。
